ポリネシアカルチャー

マオリの伝説:キウィバードが翼を失った理由

ニュージーランドの国のシンボルはキウィバードです。国の切手のイラストになっています。ニュージーランドの人々は、自分たちのことを「キウィ」と呼びます。キウィフルーツは、ニュージーランドの主要な園芸輸出品です。ニュージーランドドルすら、「キウィ」というあだ名がついています。この謙遜なキウィバードの犠牲が、アオテアロアの森を救った物語をご紹介します。ポリネシア・カルチャー・センターがお届けする有名なマオリの伝説をお楽しみください。

ある日、ターネマフタが森の中を歩いていると、自身の子供たちである木々が、空へ向かって伸びているのを見ました。悲しいことに、木々は病気にかかり死んでしまいました。昆虫たちが幹じゅうを這い回り、木の生命もろとも喰い荒らしてしまったのです。

ターネマフタは、兄弟であるターネホカホカに話しました。ターネホカホカは、自身の子供たちである空の鳥たちを呼びました。

ターネマフタは鳥たちに話しました。

「何者かがわたしの子供たちである木々を食べているのだ。あなたたちのうち誰か1名に、森の屋根から降りて地面で暮らしてもらいたい。そうすれば、わたしの子供たちは救われ、あなたたちの家も救われるだろう。来る者はいるか。」

一羽として話す者はいませんでした。

ターネホカホカは、息子であるトゥーイの方を向きました。

「エ(訳注:マオリ語で名前の前につける言葉)・トゥーイ。森の屋根から降りて来てくれないか?」

トゥーイは、木々の葉を透かして太陽を見上げました。そして、冷たく暗い森の地面を見下ろしました。トゥーイは身震いしました。

「カーオ(訳注:マオリ語で『いいえ』という意味)、ターネホカホカ、暗すぎます。暗闇が怖いのです。」

ターネホカホカは、プーケコの方を向きました。

「プーケコ、森の屋根から降りて来てくれないか?」

プーケコも、冷たくじめじめした地面を見下ろし、身震いしました。

「カーオ、ターネホカホカ、じめじめしすぎています。わたしの足が濡れるのは嫌です。」

全員が静まり返り、一羽として話す者はいませんでした。

ターネホカホカは、ピーピーワラウロアの方を向きました。

「ピーピーワラウロア、森の屋根から降りてきてくれないか?」

ピーピーワラウロアは、木々を見上げ、そして自分の家族や子供たちを見回しました。

「カーオ、ターネホカホカ、わたしは今、巣を作るのに忙しいのです。」

全員が静まり返り、一羽として話す者はいませんでした。ターネホカホカの心は悲しみでいっぱいになりました。もし自分の子供たちの誰かが森の屋根から降りて来なければ、兄弟は子供たちを失い、鳥たちは家を失うことを知っていたからです。

ターネホカホカは、キウィバードの方を向きました。

「エ・キウィ、森の屋根から降りてきてくれないか?」

キウィは、太陽に照らされた木々を見上げました。見回すと自分の家族がいました。それから、キウィは、冷たくじめじめした地面を見ました。もう一度辺りを見回すと、ターネホカホカの方へ向き直り、言いました。「行きます。」

ターネホカホカとターネマフタの心は喜びでいっぱいになりました。この小さな鳥が、希望を与えてくれたからです。しかし、ターネマフタは、キウィにこれから起こることを警告すべきだと感じました。

「エ・キウィ。もしこれを実行するなら、あなたは地面に生えている切り株を切り裂くほどの太くて強い足に成長せざるを得ないであろう。あなたは美しく色づいた羽毛と翼を失うであろう。そして、二度と森の屋根には戻って来れないであろう。再び陽の光を見ることはないであろう。」

全員が静まり返り、一羽として話す者はいませんでした。

「エ・キウィ、森の屋根から降りてきてくれないか?

キウィは、木々を透かして太陽を最後に見納め、静かにお別れを言いました。キウィは、他の鳥たちの翼と色づいた羽毛を最後に見納め、静かにお別れを言いました。もう一度辺りを見回し、ターネホカホカの方に向き直り、言いました。

「行きます。」

それから、ターネホカホカは他の鳥たちの方を向き、言いました。「エ・トゥーイ、あなたは恐怖の故に森の屋根から降りて来られなかったので、これから臆病者の印として、喉元に二枚の白い羽を授かるであろう。

プーケコ、あなたは足が濡れるのを嫌がったので、永遠に沼地で暮らすであろう。

ピーピーワラウロア、あなたは巣を作るのに忙しすぎたので、これから二度と巣を作ることはないであろう。しかし、他の鳥たちの巣に卵を産むであろう。

しかし、キウィ、あなたの偉大な犠牲の故に、全ての鳥の中で最もその名が知れ渡り、愛される鳥となるであろう。」

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